秘密の地図を描こう

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 目の前にいる機体がなんなのか。すぐには飲み込めなかった。
「フリーダム?」
 そして、それが守っているのはストライクルージュだ。
「お前なのか、キラ」
 それとも、カガリを結婚式からさらったときのように別の誰かが乗り込んでいるのか。どちらにしろ、とアスランは呟く。
「俺は、何も聞いていない」
 カガリが動くと言うことはもちろん、キラが地球に戻ってきていることもだ。
 百歩譲って、前者は仕方がない。おそらく、オーブでも彼女を探していたはずだ。
 しかし、後者は連絡を取ろうと思えばいくらでも手段があるのではないか。
「……どうしてだ、キラ……」
 それとも、誰かが止めたのか。
 可能性は否定でいない。
「可能性があるのは、クルーゼ隊長か、それともニコルか、だな」
 ギルバートはそれを黙認していたのではないか、と思う。
「とりあえず、ミゲルが知っていたのかどうか。それを確認しないと」
 それによって、今後の行動を考えさせてもらう。アスランはそう呟くとミネルバへの帰還命令に従った。
 機体から下りるとそのまま、足音も荒くミゲルを探しに行く。
 おそらく、今ならばデッキか控え室にいるのではないか。そう判断してそちらに向かっていた。
 しかし、さほど進まないうちに彼の存在を確認できる。
「だから、俺をアークエンジェルに行かせてくれよ!」
 シンがそう騒いでいる声が耳に届く。
「許可できるわけ、ないだろうが!」
 即座にミゲルが怒鳴り返している。
「アークエンジェルはザフトの艦じゃない! 行動を黙認しろと命令されているが、現状ではそれだけだ」
 それ以上の干渉は許可されていない、と彼はさらに続けた。
「でも、フリーダムが!」
 あそこにいたのに! とシンは叫び返す。
「お前、まだ、フリーダムのパイロットに復讐をしたいのか?」
 次の瞬間、ミゲルが低い声で問いかけの言葉を口にする。
「そんなわけ、ないでしょう! 俺が心配なのは、あの人の体調の方です」
 自分が知っている頃からあまり丈夫じゃなかったでしょう、とシンは言う。
 そんな時期から、シンは彼のことを知っていたのか。その方がショックだった。
「俺には連絡もくれなかったのに」
 自分とカガリがどれだけ心配したのか、とアスランは呟いてしまう。
「それも心配ない。ちゃんとストッパーが付いてきているそうだ」
 それでなくても、アークエンジェルには彼の保護者がたくさんいる。その言葉は間違いなく真実だ。
 でも、とアスランはため息をつく。
「できれば、俺もその中の一人でいたかったんだがな」
 今の状況では無理だ。
 だから、少しでも近くに行きたい。
「……今はいかない方がいいか」
 あれと同じレベルだと思われるのは不本意だ。
 しかし、とかすかに眉根を寄せる。
「キラはあちらこちらで無駄に魅力を振りまきすぎだ」
 おかげで、余計な連中までつれているではないか。ミゲルやニコル、それにイザークは妥協してもいいが、それ以外の人間は気に入らない。
 むしろ、と続ける。
「あいつの魅力は、俺たちだけが知っていればいいんだ」
 そうすれば、キラだって不要な人間の相手をしなくてすむのではないか。そうすれば、彼の体調もあそこまでひどくならないような気がする。
「……とりあえず、誰かと連絡が取れないか、試すか」
 カガリのメールアドレスが生きていればいいが、とため息をつく。そうでなければ、少し時間はかかるがマルキオ経由だろうか。
「ともかく、だ。俺たちはこれからディオキアだ。議長の護衛をしなきゃないからな」
 あきらめろ、とミゲルがシンに言っている。
「また、厄介なことになりそうだな」
 それでもキラに会いたいのだ。そう呟くと、とりあえずきびすを返した。

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最遊釈厄伝